和服の柄合わせのお約束 図柄のコンビ・パターン

和柄に限らないだろうが、図柄の合わせ方には、お決まりの基本パターンというものがある。
桜と短冊、楓と流水、うさぎと月、鳳凰と桐、すずめと竹、あやめと八つ橋、ペンギンと氷、千鳥と波などというようなものだが、一つひとつ挙げ出したら切りがない。

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図柄のコンビ・パターン

これらは、意匠として着物だけで完結していることもあるが、たとえば、あやめだけの柄が配された着物があるとする。これにどんな帯を合わせるかは悩ましいところだが、ここに八つ橋の描かれた柄を持ってくれば間違いないのだ。
あるいは、うさぎ柄の着物に、雪輪や花丸紋のデザインの〇(まる)を満月に見立てて合わせたりしても楽しいし、逆に、輪つなぎの着物にうさぎの帯を選んでも、ひねりが効いていて面白いと思う。

こうした組み合わせの中には、和歌や源氏物語等に由来するものもあるが、そんないわれも知っていれば、柄合わせを応用したり見立てたりする幅も広がり、コーディネートそのものが、あたかも知的ゲームを楽しむような奥行きの深いものとなる。

自分に似合うコーディネートを見つけるためには、まずたくさんのコーディネート見て取捨選択していくのが早いように思う。好きなものと似合うものは別ということもあるが、年を重ねるうちに、これが不思議と近づいてくるように感じるのは私だけだろうか(笑。

ネットで見る図柄説明の不思議

私はネットで和服を見るのが大好きで、コーディネートの参考にしたり、生地や柄、産地、織元などについて学ぶことも多いのだが、ときおり「?」な商品説明などを目にして吹き出してしまうことも(笑・・。

特に、あまり着物に詳しくない個人の方が出品しているヤフーオークションなどで、こうした経験が多い。

一例として、逆さまに見ても芙蓉の花なのに百合と書かれていたり、浅黄色と勘違いしてだろうと思うがクリーム色を浅葱色と表現していたり、オリエント柄というのが完璧に古典柄だったり、単純な山波模様が茶屋辻と説明されているなどというのは、よく見かける間違いだ(笑。

そんな中、最近の傑作ともいえるのが、「アンティーク ひよこに流水 名古屋帯 逸品」とする和服専門店の中古帯だった。

どんなかわいい図柄かと思って、商品の写真画像を拡大までして見た私も私だったがw、ちゃんと見れば、それは明らかに千鳥が波打ち際で遊んでいる構図である。・・であれば、この帯柄の説明は「ひよこに流水」ではなく、「波に千鳥」が正しい。

考えてみれば、いくらアンティークでも、ひよこと流水の組合せなんて聞いたことがない。余計な心配ではあるが、ペンギンの子じゃあるまいし、流水の側にいたらひよこが溺れてしまうではないか(笑・・。

掲載した人もがんばって考えたのだろうが、正確性が怪しいなら単に花とか鳥としておけばいいものを、よりによって「ひよこに流水」なんて(笑・・。
逸品なのはこの発想の方かも・・とか思いながら、失礼にも、一人で大笑いしてしまったのだった。

ひよこ千鳥?が愛おしくなり・・

しかし、そうこうしながらこの帯を眺めていたら、ひよこに間違えられた千鳥たちが、だんだん愛おしく思われてきた。
そのままパソコンの画面を消すのも不憫な気になり、ついには、夏ののれんにでも加工しようと購入してしまったのだ(笑。
これはもしかしてお店の巧妙な販売戦略で、私は単に乗せられただけだったのだろうかw。

もともと着用目的ではなかったが、到着してから見ると古い物らしく、やはりだいぶ汚れている。
さっそく帯芯を抜き、生地を手洗してアイロンをかけた。こうして、きれいになっていま私の手元にいる千鳥たち。

これは、私と「ひよこ千鳥?」の奇妙なご縁のお話である(笑。