満開の桜の帯と着用期間の短さ、そして「桜楓」柄に思うこと


紋意匠地に手描き友禅で、満開の桜を染めた名古屋帯。
毎年3月になると、今年こそは!と思いつつ、合わせたい紬や淡彩小紋の着物も考えているのだが、あっという間に時期を逸して、まだしつけが付いたまま・・。

スポンサーリンク

満開の桜を描いた染め帯

着物も帯も小物も、それぞれに意匠を懲らしてあって、とても美しいものだ。
しかし、時季限定の絵柄は着用期間が短く、その時を逃すと、また1年和箪笥に眠らせることになってしまう。

和装では季節の先取りがお約束なので、たとえばこの満開の桜柄の帯ならば、梅の花が終わってから桜の三分咲きくらいまでが着用の旬であろうか。
つまり、もっともふさわしい期間は、1年に3週間ほどしかないということになる。

もっとも、真夏に着る浴衣の柄でも桜や梅が描かれているものもあるし、時期をはずして着てはいけないということもないのだろうが、やはり、ここ一番という時に着ている人を見ると、センスの良さとこだわりの美意識を感じる・・。(なので、誰かが時季はずれで着ていてもかまわないが、私は着ない(笑)。

しかし、今年もあとわずかな期間に着られなければ、また来年までおあづけ・・。がんばらなければ!

「桜楓」に思うこと

ちなみに、和柄の1つに、春と秋の美を取り込んだ「桜楓(おうふう)」といわれるデザインがある。
この「桜楓」は、それぞれの名所を並べて「吉野龍田」などと風流に呼ばれることもあるが、桜の花と楓の葉が一緒に描かれて吹き寄せのようになっている図柄はよく見かけるものだ。

あまり和服を持たない現代人のために、和装業界によって通年着られるようにと工夫されたデザインだと思うが、個人的には、この一緒くたというか、ごった煮感というかは、あまりいただけない。
(「宝尽くし」や「四君子」もいろいろなモチーフが描かれるが、こちらは集合体としての意味があるので、私の中では「桜楓」とは別のお話なのである。)

ついでに、こちらは秋に着たい紅葉の染め帯。

楓自体は、必ずしも秋だけの風物ではない。紅ければ紅葉でもちろん秋、しかし青ければ青もみじで新緑の頃の柄行とされる。
写真の帯は、深まりゆく秋の紅葉が待たれる頃がここ一番の時期となるが、着用期間は一般に桜よりは紅葉の方が長い。


ともあれ、季節の花や風物詩は、春夏秋冬その限られた時々にそれぞれを愛でながら、ていねいに楽しみたいものである。
時季を逸して着回せていない私がいうのも何ではあるが(笑・・。