森 鴎外が、ドイツに残してきた恋人を想いながら「舞姫」を執筆した新妻の家「鴎外荘」

森 鴎外は、津和野のご典医のお坊ちゃま。
そこで長男として生まれた林太郎は、長じて現東大医学部を卒業した後に軍医となり、ドイツに国費留学もした超エリート。
 

帰国後は、本業の傍ら執筆活動も行い、夏目漱石と並び明治の文豪と称される知識人でもある。
鴎外の作品は多いが、ドイツ3部作の1つにも数えられる代表作「舞姫」について思うこと。
 

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「舞姫」とエリス

短編小説「舞姫」は、貧しい国費留学生がドイツで踊り子エリスと恋に落ちるが、身ごもった彼女を一人残して泣く泣く帰国してしまうという悲恋(非道?)物語である。
・・だが、その内容は鴎外自身のドイツでの体験がベースになっているといわれ、恋人エリスのモデルとなった実在の女性、エリーゼも特定されている。実際にも彼女は、ドイツでの別離後、日本の鴎外の元を訪れている。
 
小説中では、「本国をも失ひ、名誉を挽(ひ)きかへさん道をも絶ち、身はこの広漠たる欧州大都の人の海に葬られんかと思ふ念」で帰国する主人公・太田豊太郎だが、格調高く何を書いちゃってるのだ(笑。
・・という率直な感想を持つのは私のみではないだろう。

 

 

鴎外自身はドイツ留学からの帰国後、母親の強い勧めで結婚し、池之端にある妻の実家の持ち家で新婚生活を過ごす。
 

この旧邸は、小さな中庭も含め、現在水月ホテルの敷地において「鴎外荘」として残されている。
東京の天然温泉第1号である「鴎外温泉」も有する水月ホテルでは、この居宅のお座敷も宴会場として利用させてもらえる。
 


 

お座敷は「於母影の間」「蔵の間」「舞姫の間」と名付けられ、大小3室あるのだが、新妻を前にエリーゼを想い、小説「舞姫」を書いたとされるのが、ここでいちばん大きな「舞姫の間」である。
 


 

この結婚生活が短期間で破綻したという事実をみても、妻登志子の心中は察するにあまりある。・・というか、そもそもはた迷惑な結婚ではなかったのか?(笑
 

自由に配偶者を選べなかった国費留学のエリートの宿命といえば聞こえはいいが、このお話を知ってから、私はどうも、鴎外の作品を読む気がしなくなってしまったw。
池之端のお店自体は好きなので、たまに利用しているが・・。
 

ここは、「今も昔も、男性というのはまったくw・・」というオチでいいのだろうか(笑。
 

しかし一方で、鴎外との別離後からエリーゼが亡くなるまでの半生を解き明かしていく「鷗外の恋 舞姫エリスの真実」およびその続編の「それからのエリス」という書籍がある。
両書にまとめられた、各面での徹底したリサーチを元に積み上げられた推測は、かなり真実に近そうに思われる。ここから導かれる二人の継続した関係性は興味深く、「舞姫」で生じた無慈悲・無責任という鴎外のイメージ?(笑)と読者の非難感情を払拭させるものである。
本書を著した六草いちかさんの、鴎外研究ないしは鴎外自身に対する貢献は、決して少なくないであろう。
 

【水月ホテル鴎外荘】のご紹介記事はこちらに書いたので、ご参考までに
 
https://mikki-site.com/s03/ougai-349/