初の文楽鑑賞は「菅原伝授手習鑑」。大阪市内にある国立文楽劇場にて

これまで、行きたいと思ってなかなか機会がなかった国立文楽劇場だが、今回の出張にかけて、ようやく同劇場見物と文楽鑑賞をすることができた。
文楽劇場といっても、常に文楽の公演をやっているわけではないので、延泊するにしてもタイミングがむずかしかったのだ。

こうした劇場では、和装姿の観客も多く、素敵な着物姿がたくさん観られるのも私にとっては楽しみの1つである。

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4月文楽公演の第1部「菅原伝授手習鑑」

月例公演はだいたい二部制のようで、4月文楽公演の第1部は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」。
これは「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」と並ぶ義太夫浄瑠璃3大名作の1つとされ、特に四段目の「寺子屋」は、人形浄瑠璃のみならず、歌舞伎でもよく上演される人気演目である。

筋としては、平安時代、菅原道真が大宰府に左遷された失脚事件に絡み、その権力闘争の周辺関係者の生き様や三つ子の三兄弟の悲劇を描いた作品である。
悲劇的な時代物の代表格であるが、忠義の証とはいえわが子の首を道真嫡男の身代わりに差し出させるという筋立ては、現在に生きる私にとっては少々ナンセンスであり、素直に悲しむには躊躇してしまうものだが(笑・・。

今回は折よく六代目となる太夫の襲名披露口上が聞けた。

公演開始から終演まではほぼ4時間。時間を見たときは長いかと思ったが、何度かの休憩をはさみテンポも速く、それほどの長さは感じなかった。

文楽は、太夫・三味線・人形が一体となった総合芸術といわれるが、実際に劇場に足を運んでみるとその意味がよくわかる。
太夫一人でト書きから登場人物全員の台詞まで語り続ける難しさもさることながら、その太夫の語り調子と人形の動きをぴったり合わせる感覚にも高度な技術がうかがわれる。

文楽は大阪発祥の伝統芸能

上方発祥の芸能は多いが、中でも文楽は、大阪で生まれ育った伝統芸能として広く知られている。だからこそ、この地に国立文楽劇場があるのだ(ちなみに主要な国立の劇場は、東京4カ所のほか、大阪と沖縄にそれぞれ1カ所ある)。

大阪の人から吉本新喜劇の勧めを受けることはけっこうあるのだが、なぜか文楽は、話題としてさえも、あまり聞いたことがない。私の狭い周辺だけの話だろうが、このことを実はずっと不思議に思っていた(笑。

文楽は日本を代表する伝統芸能の1つで、世界に誇りうる高度な舞台芸術でもあるのに、こんな立派な施設を擁する現地の評価としては、本当にもったいないことだ・・。