このごろ都に流行るもの  レンタル おそろい ポリ着物・・観光地で思うこと


古都あたりを散策していると必ず見かけるようになった和服の女性連れやカップル・・。
京都に限らず、奈良や浅草なども含め観光地でよくあるレンタル着物である。
着ているのは外国からのお客様かと思いきや、ほとんどがわが国の若人たちである。

旅情に誘われて、あるいは和服に興味をもって着物姿で歩くのは、気分的にも風景的にもステキなことだと思う。

でも、気になることも少々・・。

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着ている着物がみんなおそろい

和服姿の人がいると、つい振り返ってまで見てしまうのは私の悪い癖かも(笑・・。
しかし、観光地界隈のこうした着物姿を観察していると、やはり違和感を禁じ得ない。
特に女性は、アンティーク風な大柄牡丹の着物に半幅帯の文庫結び、足下はタビ靴下に桐の下駄がお約束。着物の色こそ違え、あまりにみんなおそろいなので、何だか時代劇の女中さんみたいに見えてしまうのだった(笑。



これらは、だいたいがポリエステル・プリントで量産された生地を着物に仕立てたものだろう。よく見ると仕立てが粗いものが多い。

私は別に、ポリ着物が悪いと思っているわけではない。絹のようなしなやかさはないが、きちんと仕立てられた着物もあるし、お洗濯などのメンテナンスには手がかからなくて便利だ(個人的にはあまり愛着は湧かないが・・)。
特にレンタル店ならクリーニング費用の問題もあるだろう。

しかし、紬産地などでは本物の正絹紬を貸して着付けてくれるところもあり、こういう良心的なレンタル着物の方が、着慣れない人が本当の和服に触れるいい機会にもなるに違いない。

雪の日に帯付き姿の寒々しさ

2月に京都の嵯峨野に行ったときは、特にこうした着物姿に悲しくなった。・・というか、見ているこちらまで寒くなってしまったw。
この日の京都は大雪。私のように、雪積もる金閣寺への参詣を楽しみにした観光客も多かった。

こういう場所でのレンタル着物がほぼおそろいなのは、いつもどおり。
しかしこの寒空に、道行や道中着等のコートはおろか、羽織も着ていない帯付き姿で外を歩いているのだ。
洋服だったら、雪が降り積もる日に、コートも着ないで外出する人なんて想像できるだろうか・・。


案の定、行き違うのは、風通しのいい袖口を覆うように胸元で両腕を合わせ凍えそうな格好の人や、フリースの毛布を上半身に巻き付けながら震えている人ばかり。
もともとが、見るからにペラペラで薄手のポリエステル着物である。寒くないはずがない。

さらに、真冬なのに、浴衣のような純白地の着物姿を交えた一群が、寒々しさを倍増させていた・・。
(和装で白は、冬の色とされる、しかし白に見えても、たいていはオイスターホワイトといわれるベージュ系やクリームがかった色が多く、染める前の白生地のようなピュアホワイトは実は滅多にない。)

レンタルするなら羽織かコートもあってほしい

日本人でも外国人でも、関心を持って和服を着るのはとてもいいことだと思うし、和服好きな自分としても嬉しいことだ。

でも、たとえば初めて着物を着た人がこんな寒い思いをしたのでは、かえって着物嫌いになってしまわないだろうか。もしくは、着物は寒いものと思ってしまうのではないだろうか・・。
色や柄といった風情などはひとまず置いておくにしても、きちんと着れば暖かい衣装なのに、そんな風に思われるのは悲しいことだ。

レンタルするお店は、通年のお商売ではあろうが、寒いときにはちゃんとコートまで用意するか、せめてアンサンブルを貸して着せることを考えてほしいところ(無理なら真冬は止めればいいのに・・)。
余計なお世話ではあろうけれども、観光地に定着したこの「とりあえず着物」的な光景には、いつもかなり物憂い気分にさせられる。