これは、和裁教室の課題で私が仕立てた名古屋帯。
カラフルな刺繍のカタツムリが配されたグレー時の帯地は、一目見て気に入り、即買いしたものだった。
一般に九寸と呼ばれる名古屋仕立ては、軽装帯で帯の仕立ての主要部分を一通り習った後の課題になっている。まだ軽装帯の教程にも入っていなかったが(笑、その時用の材料として早々に準備してしまった。
仕立て上がるのは袷の冬用名古屋帯
そして迎えた名古屋帯初日の和裁教室。
自宅のスチームアイロンで地直しをしたこの帯地をうれしそうに広げると、他の生徒仲間の人たちも「ステキ!」と言ってくれたので、仕立てるのを楽しみにしていたのだ。
その後、先生が「かわいい柄だけど、着る時期が難しいわね・・」とつぶやいた。
そこで私も気づいたのだが、確かに着用時期を考えると、これはとても難しい帯だったのだ。
その後はみんなで、これをいつ着ればいいのかが話題になったのだが、単品での柄に一目惚れしてその点を見落としていたなんて。私としたことが(笑・・。
カタツムリは夏帯の時期に着る柄なのに・・
そもそもカタツムリといえば、6~7月の紫陽花の頃の風物詩だろうか。そうすると、着る時期としては季節先取りのお約束に従って、5月下旬から6月上旬にふさわしい柄行きとなる。
一方、和装では、6月は透けない単衣への正式な更衣の時期(昨今はこうしたルールも弱くなり、地域によっても違いはあるようだが、とりあえず)。通常は帯も長襦袢も、これまでの冬物から夏用に変える。
ここで夏帯というのは、絽や紗、あるいは博多帯のような八寸名古屋といわれる単衣の帯のことである(羅や麻帯は、通常、7月と8月の盛夏に用いる)。
しかしこの帯地は、帯芯をいれて仕立てる袷名古屋になるので、本来は5月までの帯である。しかし、6~7月の柄をカラッとさわやかな時期に着ても風情がない・・。
単衣仕立ての夏帯でもないため、6月に用いるものでもない。悩ましいことになってきた。
この帯に合わせてそろえた紫陽花の帯留めはガラス製
カタツムリの生態なども調べながら考えた末、5月下旬から6月上旬なら、きりぎり許容範囲だろう・・と思うことにした(笑。(ちなみに、調べてみたところ、カタツムリは実際には通年生息する動物とのことだった。しかし、乾燥に弱いため湿度の高い梅雨時に出現して人の目に触れるので、この時期の動物のように思われることになったらしいw。)
1年のうち3週間を許容範囲に決定したw
こうして熟慮の結果、着られるのは1年に3週間弱、ということになってしまった・・。
つまり、お天気も不安定なこの時期を逃すと、また翌年まで和箪笥に眠らせることになってしまうのである。
なので、今年も今からスタンバイ(笑。
写真は、この帯に合わせたいとずっと前から思っていた、阿波藍染めのしぼ高ちりめんで仕立てた単衣小紋。一面に散らされた小花を紫陽花の一花たちに見立て、紫色の紫陽花の帯留めで引き締めてみたい。
今年はこのチョイスで出番を待っている。
そして、この短期限定のコーディネートを、「水無月の移ろい」とワタシ流に命名してみた次第であるw。