「風をまとう着物」と呼ばれる小千谷縮は、縦に小さく入るシボが身上。
越後上布と同様に新潟県小千谷市で生産される麻織物で、サラサラした生地が涼やかな上に、シボに空気を含むせいか、着心地もとても軽やかだ。
小千谷縮のシボ出しと「雪晒し」
縦糸に500回、緯(よこ)糸はその倍の1000回撚りをかけた麻糸で織り上げる。できあがったばかりの反物はパリパリのうすい板のような状態だが、40度ほどのお湯で糊をおとす「湯もみ」の行程を経て柔らかくなり、撚りが戻ってシボが生じる。緯糸の方が撚りが多い分、戻りも大きくなるので、横に縮みがかかって縦にシボが入りことになるのだ。
現在は機械織りも多いが、重要無形文化財の本製小千谷縮は、麻の真皮を爪で割いて髪の毛ほどの糸を作るところからすべて手作業のため、生産数は限られる(当然お値段にも反映されるw)。
また、本製では地機(じばた)で織るが、織機に触れることの多い縦糸は切れやすく、模様は緯糸で出す方が効率的になる。小千谷縮に限らず、麻生地にシンプルな柄付が多いのはこのためでもある。縦糸も染めて複雑な柄を出すこともあるが、その分手間がかかることから、これもお値段に反映される大きな要素になるわけだが・・。
湯のしが終わると、最後の仕上げが「雪晒し」。反物を好天の雪の上に1週間ほど広げておくという作業だが、これもこの布を特徴づける工程である。
太陽光があたった雪の表面にはオゾンが発生するのだが、このオゾン層の殺菌・漂白作用が、生地の色味を落ち着かせて丈夫で美しくしてくれる。・・なので、小千谷縮は、みんな冬生まれなのだw。
ちなみに、小千谷縮では、着物を反物に戻して雪晒しをすることもある。オゾンの強い漂白作用によって、時代物といえるような古い生地でも、驚くほど白くきれいに生まれ変わる。
生まれ故郷に戻ってきれいになって戻ってくるところから、このお手入れを「小千谷縮の里帰り」というのだが、布への愛情に満ちた何て温かい表現なんだろう♡ 私はこの言葉がとても好きだ。
単衣でも浴衣でも! 洗えるのも魅力的
小千谷縮は素肌にも張り付くことなく風通しもいいので、単衣着物としてはもちろん、1枚で浴衣としても着られる便利な着物だ。しかも、気軽に自分で手洗いできる麻素材は、夏場には魅力的である(ただし新しい生地だと数回はお洗濯のたびに縮むので、仕立てる際は、特に身丈をやや長めに作ることをお薦めする)。
写真は以前、お教室で仕立てたお手製の1枚。麻生地は固いし針の滑りも悪いので、縫うのが大変だったことを思い出したw・・)。この着物は、涼やかなブルーがラムネ瓶を想像させるので、何となく「ラムネ色縮」と名付けてしまった(笑。
合わせる帯は、半幅でも紗献上でもいけそうだが、麻縮みはやはり、羅や麻などの盛夏素材と楽しみたい・・。
小千谷縮の反物(楽天サイト)